何をやってもうまくいかない、仕事ができないのは自分がダメ人間だから。
そんなふうに自分を責めていませんか?
誰かに相談して「大丈夫、仕事できてるよ」「もっと自信もっていいよ」なんて言われても、適当に都合のいいことを言っているようにしか聞こえない。
相手は気を使っているのかもしれませんが、下手に慰められるとさらに落ち込む悪循環。
自分に自信のある人を見ると、どうしたらそんなふうになれるのか不思議に思いますよね。
自信のある人とない人なにが違うのか?
結論を言ってしまうと自信のない人は、褒められても自分で自分を認めていないから相手が嘘をついているのでは?と疑って言葉を信用できないのです。
自分に自信がないから、他人の言葉を素直に受け入れられない。
自信のある人は悪くいえば、他人の言葉を鵜呑みにしてどんどん自信をつけていくのです。
とはいえ、いきなり他人の言葉を受け入れることは頭で考えてもなかなかできることではありません。
そこで今回は自分に自信が持てない、他人の言葉を素直に受け入れられない人が、自分も役に立っていると思えるようになる小話を紹介しようと思います。
穴のあいた桶/プレム ラワット
昔、ひとりの庭師がいました。彼は、山の上に住んでいました。
毎日、谷の下の川まで降りて天秤棒の両端に水を満たした大きな桶をかけ、それを担いでまた庭がある山の上まで登っていきました。
とても大変な仕事でしたが彼は庭の世話が大好きで、楽しんでいました。
ある日、庭師はいつものように、水をもって山を登っていると足を滑らせ、ひとつの桶に小さな穴ができてしまいました。
それから数か月後のある晴れた日のこと。
庭師が山のふもとで休憩していると水が満杯に入った桶が、穴のあいた桶に向かってこう言いました。
「お前はまったく役に立たないね」
「役に立たないって、どういう意味だ?」
「お前には穴があいている。毎日親方が一生懸命に我々を運んでも、お前のほうの水はこぼれてしまい結局は半分しか運べていない。何の役にも立ってないよ」
役に立っていないと言われ、穴の開いた桶はとても悲しくなりました。
次の日、穴のあいた桶は庭師にこう言いました。
「私はとても悲しいです」
「なぜ悲しいのだ?」
「私には穴があいています。あなたは私に水を満たして運びますが、上につくころには半分なくなっています」
そう聞いて、庭師は言いました。
「それは本当だ。お前には穴があいている。でも、それがどういうことかわかるか?」
「自分に穴があいていることしかわかりません。穴があいていてはダメです。穴がなければ、私も水を一滴も漏らさず上まで運べます」
と桶は答えました。すると庭師は
「お前は、私たちが通る道を見たことがあるか?たくさんの美しい花が咲いているだろう。あれは、お前のおかげなんだよ。
お前に穴を見つけたとき、私は道に花の種をまいた。お前に穴があいているおかげで私が水を運び上げるたびに、花の苗に水をやることができる。
今では、きれいな花が咲き、ミツバチが蜜を求めてやってくる。一帯が見事な花園になっているんだよ」
桶はそう聞いて、とてもうれしい気持ちになりました。
あなたは、あなたのことを知っていますか?
自分のことは自分が一番よくわかっていると思いがちですが、実際はそんなことはありません。
「私には穴があいています。あなたは私に水を満たして運びますが、上につくころには半分なくなっています」
「穴があいていてはダメです。穴がなければ、私も水を一滴も漏らさず上まで運べます」
穴のあいた桶は、自分を「役立たず」と考えています。
そして穴のあいていない完全な桶と比べて、劣っている、ダメなやつと思っています。
完全な桶からは「役に立たないね」とバカにされるありさまです。
仕事で失敗したとき、要領のいい同僚と自分を比べて「やっぱり自分はダメなんだ」と思うことがあるでしょう。
そして関係ないのに批判してくる、おせっかいな人間はどこの職場でも必ずいます。
そんなよくありそうなシチュエ―ションでの庭師の言葉。
「お前は、私たちが通る道を見たことがあるか?たくさんの美しい花が咲いているだろう。あれは、お前のおかげなんだよ」
この一言で穴のあいた桶は、自分の本当の価値を知るのです。
役立たずなんかじゃない、自分の穴はたくさんの花を育てるために役立っていたのだ、ということを。
庭師が自分の穴に感謝までしてくれていたことを知りました。
今、自分は何をやってもうまくいかない、ダメ人間だ。
あなたがそう思うのは誰かに言われたせいかもしれないし、自分で決めつけているだけかもしれません。
しかし物事には悪い面もあれば、良い面だってあるのです。
あなたにとっての庭師は必ずいるはずです。
もしかしたらそれは「大丈夫、仕事できてるよ」「もっと自信もっていいよ」と以前言ってくれた人かもしれません。
最後にアインシュタインの名言で終わりたいと思います。
どうして自分を責めるんですか?
他人がちゃんと必要なときに責めてくれるんだから、いいじゃないですか。